こころのバリア
「どうしてそういう言い方をするの・・・」
悲しそうに彼女はつぶやきました。
■ある日の思い出
今回は、私の話をさせていただきます。
あの時、私の心は疲れ果てていました。
プロジェクトの納期が過ぎているのにもかかわらず終わりすら見えていない状態で、メンバー全員がほとんど泊り込みのような状態で仕事をしていました。
家に帰れても終電、床に就けるのは午前2時。
努力しても先の見えない、結果の見えない状態でした。
■彼女もまた・・・
しかし、追い詰められていたのは私だけではありませんでした。
私の彼女も追い詰められていたのです。
私からの連絡はまったく来ない。
夜中に電話をしても、まだ私は仕事をしている。
私はこの2ヶ月の間、まったく彼女とは話をしていませんでした。
ただ一言「忙しい」としか伝えていませんでした。
彼女は『不安』だったのでしょう。
■冷たい一言
ある日の深夜2時、眠りにつこうとしていた私はケータイの音で目を覚まされました。
電話をしてきたのは、彼女でした。
私は電話を取るなりこう言いました。
「こんな夜遅くに迷惑なんだけど」
「どうしてそういう言い方をするの・・・」
悲しそうに彼女はつぶやき、そしてそのまま電話は切れました。
そして、2度と彼女から電話が来ることはありませんでした。
■自分を守ろうとして
どうして、人は傷つけたくない人を傷つけてしまうのでしょう。
どうして、守りたいと思った人を悲しませてしまうのでしょう。
今ならわかるような気がします。
私は、余裕が無かったがゆえに心にバリアを作っていたのです。
そうしないと、自分の心を守れなかったから。
心に余裕が無くて、ささいなことでも傷ついてしまいそうだったから必要以上に他人を拒絶していたのです。
そして、その心のバリアを彼女にも向けてしまったのです。
私は彼女に連絡をしていないという負い目があった。
それを責められるのが怖かったから『迷惑』という言葉で、自分の心を守ろうとしてしまったのです。
人は、余裕が無いときに、心にバリアを作ります。
心のバリアは近くにいる大切な相手を傷つけてしまいます。
恋人や夫婦など心が近くにいる人ほど、相手の心の深くに入ろうとしてくれます。
しかし心の深い部分ほど、バリアが強くなるので、親しい相手ほど傷つけてしまうのです。
もし私があの時、10分でも彼女の話を聞こうとしたのなら・・・
もし私があの時、自分の心のうちを素直に伝えることができたなら・・・
心のバリアを解けば、相手を傷つけることもなかったのでしょうに。
■心に余裕が無いときこそ
私のような体験を皆さんには繰り返さないでほしいのです。
自分が傷つくまいとして大切な相手を傷つける。
その後に待っているのは激しい自己嫌悪と後悔です。
こんなとき、ほんの少し素直に自分の気持ちを見直す。
本当は、自分の心にバリアを張っていただけ。
気持ちを伝えるときには心のバリアを解いてみる。
素直に「私も話をしたかった、ゴメンね」と言ってみる。
私も含めて、誰もがそう言えるようになれば、もっと人は分かり合えるのでしょうね。
織田隼人 | この記事を友達に紹介する