2人の成功哲学
「ついにここまでやってきた。オレも成功者と言われる立場になったんだ」
健二は今までの努力を思い出してこうつぶやいた。
「・・・でも、彼女はもうオレのそばにはいない」
健二はとあるベンチャー企業の社長。
会社は順調に伸び、2年前に上場もした。
しかし、そこまでの道のりでたくさんのモノを失ったのである。
■1人での成功
男性が成功を勝ち取ろうとしたとき、考えることは何か。
『自分のやるべき事を思いっきり集中して実行する』というごくわかりやすい結論に落ち着きます。
ビジネスの世界は『経済性』で考えられます。
今より稼ぐには、今の仕事の無駄な部分を切り捨てて価値を生み出す仕事のみに集中する。
これが経済性を重視した結果現れる現象です。
ビジネスの世界で成功するために、男性はそういった効率性を重視します。
男性は成功するために、いらないもの(仕事)を切り捨てること(優先順位を付けて行動すること)を選択します。
仕事に本気で取り組んでいる男性は寝る時間や遊ぶ時間、果ては自分の部屋を片付ける時間すら削って働きます。
■経済性の失敗
ところが、恋人や夫婦の付き合いの場合、『経済性』とは違う次元の考え方が存在します。
「付き合い」とは、経済的には「無駄な時間」です。
花を渡す行為も、『経済的』には無駄な行為です。
花より、本や食べ物を渡す方が実用的で『経済的』。
なのに花をもらうと、うれしいと感じる。
この一見無駄と思える行為こそが付き合いの本質なのです。
経済性や効率を無視して、相手に向けて浪費するからこそ、相手はその気持ちに感動するのができるのです。
■経済性が危険に
ところが、仕事をバリバリやり始めた男性は、考え方が経済性の論理に支配されるようになっていきます。
付き合いの時間は反経済的なため、どんどん削られていくのです。
そうなると、恋人または夫婦の関係は危機にさらされます。
相手の女性が悲鳴を上げ始めるのです。
(『メールが来ない』『別れの4ステップ』『黙ってSOS』参照)
カップルの間を『経済性』という物差しで測ることは、プラスにはならないのです。
■2人の成功哲学
「働く時間を彼女のためにも減らしてみた。そうすると急に物事がうまく進むようになった」
この手の話は世の中に多々あります。
自分1人だけで成功したい場合は、すべてを擲(なげう)って働くことで実現が可能です。
それが、2人での成功になると、まったく方向性が変わるのです。
2人の場合は、『相手のことを考えられる程度の時間を確保する』ことによって、余裕が生まれてきます。
『相手のことを考える』ことによって、自分の視界も広がります。
ところで、ビジネスの世界のルールは『経済性』だけではありません。
ビジネスの世界にはもう1つのルール、『お金は外部からしか入ってこない』というものがあります。
成功するためには、外部からお金を手に入れる必要があります。
パートナーに目を向けるという余裕を持つことによって、「外部の人の考えを知る」ためのトレーニングが自然にできるようになります。
効率性の追求という自分の『内部』のみで処理できる考えから、自分の外部までを含めた考えに範囲をひろげることができるからです。
この結果、外部(お客さんなど)に対して新たな価値を生み出せるようになり、ビジネスがうまく進むようにもなるのです。
もし、大切にしたいパートナーが居るのに、忙しすぎて『相手をないがしろにしている』と気付いたら、それは自分自身のためにも『なんとかしなければならない』と危機感を抱いてください。
目の前にいるパートナーとさらなる成功を、みすみす見逃している可能性が高いのです。
人は人との関係性が1つでも増えると、自分の立ち位置や世界が変わります。
『自分から相手に目を向ける』という、難しいけれども大切なことが出来始めたときこそ、自分の世界が大きく変わるときなのかもしれません。
織田隼人 | この記事を友達に紹介する